第26回:読み聞かせる際に気を付けていること
前回の読み聞かせの続きです。
親となり、読み聞かせの時間がありますが、その際に意識していることを少し共有できればと考えます。
ゆっくり感情をこめて読み聞かせることを意識しています。
改めて書くことでもないかもしれませんが、私はそこに重点を置いています。
世の中には、声優さんといった声のお仕事をされている方がいます。
もちろん、その方々には到底及びませんが、自分のできる限り、それを目指しています。
私たち医師は声のお仕事だと思っています。
老若男女に対して、その病状を的確に伝え、治療方法について説明し、最善の治療を行う。
その説明の際の、会話こそが我々の最も力を入れるべきところだと考えます。
その昔、医師の世界はパターナリズムといい、医師のいったことは絶対であり、その治療方針に従う以外ありませんでした。患者様に説明するのではなく、説得するムンテラと呼ばれていました。
現在はインフォームド・コンセントといい、患者様に説明し、その上で患者様に治療方針を決定していただいています。
しかし、患者様は医療のプロではありません。
病気は複雑であり、その治療方法も複雑です。
これを数回の説明で十二分に理解しろというのは、ほぼ不可能だと考えます。
そこを少しでも埋めるための丁寧でわかりやすい説明が必要なのです。
その際に、実感するのが、私たちは声の仕事をしているのだなということです。
ゆっくりはっきりと説明するのが基本ですが、間合いだとか、声の抑揚だとか、そういったちょっとしたことが患者様の病状理解や治療方針の決定に役立つと考えます。
病状説明はシビア内容ですが、このスキルを活かしながら、時に面白く、時に恐ろしく、時に悲しく、時に楽しく、読み聞かせているつもりです。